台湾最高行政裁判所大法廷が「著名商標」の認定基準を統一

Vol.146(2024年10月14日)

 台湾最高行政裁判所大法廷は2023年3月17日、111(2022)年度大字第1号裁定において、商標法第30条第1項第11項後段で規定されている「著名商標」の保護1(以下、「著名商標の希釈化からの保護」)について、「著名商標」の認定基準を「一般的消費者に普遍的に認知されているレベルに達しているかどうかにかかわらず、関連事業又は消費者に普遍的に認知されていることを証明する客観的な証拠があること」へ統一する見解を示した。

事件の概要

著名商標「VALENTINO」の商標権者であるイタリア企業・バレンティノ社(Valentino S.p.A.)は、著名商標の希釈化からの保護を主張し、台湾企業・優尼士国際股份有限公司(YUNIX INTERNATIONAL CORP.、以下「優尼士国際社」)の後願登録商標「GIOVANNI VALENTINO ITALY」(その後「GIOVANNI VALENTINO」商標に変更)に対して、異議申立を提起した。本件は現在、バレンティノ社が最高行政裁判所に上告し、審理が行われている。

最高行政裁判所は本件の審理において、前記「著名商標の希釈化からの保護」における著名商標の認定基準に否定説の見解が採用されることを望んだが、これまで最高行政裁判所が下した判決では肯定説が採用されてきたため、大法廷へ法的見解の適用に関する争議が移された。

 
商標権者 台湾企業・優尼士国際社 イタリア企業・バレンティノ社
商標
区分 24 3、14、16、19、20、21、23、24、25、35等

法律紛争の争点

著名商標の希釈化からの保護規定で言及されている「著名商標」の適用には、商標の著名度が関連消費者を超えて一般消費者に普遍的に認知されているレベルに達しているとの解釈が必要か否か。

1. 従来の法的見解(肯定説):最高行政裁判所2016年11月第1回裁判所長官・裁判官合同会議決議

著名商標の希釈化からの保護が、利益衝突の状況が不明瞭な商品/役務にまで及ぶことを考慮すると、商標の著名度が一般消費者に普遍的に認知されているレベルに達している場合において、当該商標を著名商標として認定すべきである。

2. 最新の法的見解(否定説):最高行政裁判所大法廷111(2022)年度大字第1号裁定

商標法第30条第1項第11号後段の「著名商標」には、商標法における他の「著名商標」と同様の定義が採用されている。よって、同条後段の「著名商標」とは、「関連事業又は消費者に普遍的に認知されていることを証明する客観的な証拠がある」商標である。

大法廷の見解

1. 肯定説は、合目的性の縮小解釈により、商標法施行細則第31条の「著名」に対する定義規定が、商標法第30条第1項第11号後段にいう「著名商標」には適用されない、とするものである。

しかし、この解釈から「商標法第30条第1項第11号後段にいう著名商標は、同規定が適用されるために、一般消費者に普遍的に認知されるレベルに達していなければならない」という結論を導き出すことはできない。

2. 商標法第70条第2号では、民事事件の権利侵害事件が著名商標に係る商標権侵害(著名商標の希釈化も含まれる)とみなされる場合、同規定が適用される「著名商標」とは、関連事業者又は消費者に普遍的に認知されているものを指すと規定されている。さらに、肯定説では、行政事件と民事事件での認定に矛盾が生じ、商標権者の権利利益や市場取引の秩序に不利な影響を及ぼす可能性がある。

 

今回大法廷が示した否定説の見解に基づき、「著名商標」の認定基準は、商標法施行細則第31条で規定されている「関連事業又は消費者に普遍的に認知されていることを証明する客観的な証拠があること」へ統一される。これにより、「著名商標の希釈化からの保護」規定による著名商標権利者への過度な保護に対する懸念が回避できるだけでなく、行政訴訟と民事訴訟で著名商標の認定が異なるという従来の状況が解消されると思われる。

 

[1] 商標法第30条第1項第11号後段:「他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のもので、著名な商標又は標章の識別性又は信用を損なうおそれがあるものは、登録することができない。」

 

キーワード:商標 判決紹介 台湾 商標類否

 

 

 

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