台湾商標 指定商品の類否判断に関する判例(NUPLUS事件)

Vol.53(2018年11月20日)

混同誤認の虞に係る審査において、ペット/人用商品間の類否判断に関し、従来は両者に類似関係は存在しないという実務見解が定着していた。しかし近年、知的財産裁判所は関連判決においてこれまでの見解を変更し、「両者は使用対象がペットと人であるという点で相違するが、実際の購入者はいずれも人であるため、両者間には相当高い類似性が存在する」という判断を示すものが多くなっている。以下に代表的なものを紹介する。

【代表的判決】

知的財産裁判所101(2012)年度行商訴字第83号判決
  係争商標 引用商標
登録日 2011年3月1日 2003年3月16日等
権利者 廣達香食品股份有限公司 THE SUNRIDER CORPORATION
商標 The Subject Mark The Subject Mark
指定商品役務 第31類
飼料,ペットフード…等
第5,29,32類
薬草を主原料とする栄養補助食品;乾燥果物;薬草を主原料とする飲料…等

知的財産裁判所105(2016)年度行商訴字第131号判決
  係争商標 引用商標
登録日 2015年4月1日 1989年4月16日等
権利者 大大小小行創股份有限公司 CHANEL
商標 The Subject Mark The Subject Mark
指定商品役務 第3類
愛玩動物用化粧品…等
第3,5類
各種化粧品;医療用せっけん…等

知的財産裁判所106(2017)年度行商訴字第52号判決
  係争商標 引用商標
登録日 2016年4月1日 2012年7月16日等
権利者 寶榮開發企業股份有限公司 多那之咖啡蛋糕烘焙有限公司
商標 The Subject Mark The Subject Mark
指定商品役務 第31類
飼料…等
第29,30,32類
乳飲料;茶;炭酸水...等

【知的財産裁判所の見解】

  1. ペット用品及び人用商品の類似可能性
  2. 近年の社会構造の変化に伴い、ペットを家族の一員としてみなす者が増えてきている。またペット関連ビジネスが発達するにつれ、人の需要に関連する商品役務の多くは、ペット用品の区分においても対応するものが存在するようになってきている。

  3. 販売対象
  4. 両商標の指定商品における対象に関し、一方はペット、一方は人である。しかし、動物には購買能力がないことから購入者はいずれも人となる。即ち、両商標の実質的な対象は同一、人である。

  5. 生産販売業者
  6. 一方の商標が化粧品等商品において著名である場合、当該商標権者が分野を超えて愛玩動物用化粧品にも展開したと、関連消費者は合理的に予見できるはずである。また、化粧品とペット用品において商品の材料及び外観は十分に類似することから、分野を超えて展開することは決して難しいことではない。証拠資料として提出されたアンケートにおいても、ペット用及び人用のシャンプーは代替可能である、又は配合成分が類似していると考える回答者の存在が示されている。

  7. 流通経路
  8. ペット用品及び人用商品が同一場所で販売されることが多く、ペット用品及び人用商品を同時に販売する大型スーパーも至る所にある。また、近年盛んな「ペットカフェ」のように、人用食品とペットフードを同時に販売するだけでなく、人とペットの共通の憩いの場を提供するサービスも増えてきている。よって、ペット用品及び人用商品の流通経路が重複する可能性は十分にある。

【弊所分析】

「混同誤認の虞に関する審査基準」の規定によると、混同誤認の虞に関する審査においては、通常、商品の機能、材料、産地等の要因を総合的に判断することになるが、その中でも機能の類否は、を明確にすることができる。

ペット用品/人用商品の類似関係を判断において、かつて台湾特許庁は「動物の使用又は人の使用にそれぞれ専属する」とし、両者は機能、流通経路が異なり、消費者についても必ずしも重複しないため、類似商品に属さないと認定してきた。

しかし知的財産裁判所は近年の判決において、知的財産局の過去の見解を覆し、「ペット用品はペットの使用に供するものではあるが、ペットは購入能力を有さず、実際の消費者は人であることから、ペット用品及び人用商品の販売対象はいずれも人で同一である」と認定している。この他、「ペット用品及び人用商品は、社会通念上は類似する商品に属し(例えば、ペットフードと人用食品は同じ「食品」である)、関連消費者は業者が分野を超えて展開する可能性を合理的に予見することができ、また、両者の出所、流通経路についても重複する可能性があるため、単一要素のみを考慮して類似関係を判断すべきではない」、と示している。

時代の変化に伴い、実務見解においても調整が加えられ、裁判所はペット用と人用の境界線が日に日に曖昧になりつつあると認定する傾向がみられるようになってきた。よって、今後こうした商品役務の判断はより慎重に行わなければならない。

キーワード:商標 判決紹介 台湾 商品役務 
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