台湾 商標権侵害における商品類否に関する判例(CHANEL侵害事件)

Vol.25(2015年5月21日)

台湾の商標法において通常の商標(証明標章等ではなく)の刑事罰規定は、2つが存在する。商標法第95条と第97条である。第95条は同一又は類似の商品役務についての登録商標に同一又は類似する商標の使用行為を対象としており、第97条は他人による第95条の行為の結果の商品であることを明らかに知りながら販売等をする行為を対象とする。

事件の概要

スイス企業シャネルの登録商標「CHANEL」及び「」(以下、合わせて本件商標)を模倣した携帯カバー及び保護ケースを被告Xの行為は、商標権侵害の刑事責任を負うべきか否かが争われた。本件商標の指定商品「各種かばん・手提げ袋・旅行かばん及び革財布」であるが、これらが携帯カバー及び保護ケースに類似するか否かが争点となった(知的財産裁判所2014年度刑智上易字第108号)。

知的財産裁判所の見解

被告が販売を意図して展示した携帯カバー及び保護ケース上の商標は、本件商標「CHANEL」及び「」と類似する。しかし、携帯カバー及び保護ケースは、本件商標の指定商品「各種かばん・手提げ袋・旅行かばん及び革財布」とは同一又は類似ではない。

指定商品又は役務の区分は行政管理及び検索の便宜のためであり、商品又は役務が類似しているか否かの認定においては必ずしも当該区分の絶対的制限を受けない。商標法第19条第6項にも「類似する商品又は役務の認定は、前項の商品又は役務の区分の制限を受けない」と規定されている。よって、同一区分の商品又は役務が必ずしも類似商品又は役務であるとは限らない。また、台湾特許庁は商標の類否判断のために類似群の概念を用いた「商品及服務分類暨相互檢索參考資料」(日本の「商品役務類似審査基準」に相当)」を制定している。これは商品役務の類否判断において極めて重要な参考資料であるが、当該参考資料編纂は出願に係る商標の指定商品役務の類否判断に供することを主目的としていることとに注意しなければならない。各案件においては、一般社会通念及び市場取引状況を参酌しなければならず、商品又は役務の各種関連要素について総合斟酌することが必要である。

本件商標の指定商品「各種かばん・手提げ袋・旅行かばん及び革財布」について、これらの類似群ど同一の類似群を有する商品には「コンピュータ応用製品」が含まれるが、この事実のみによって被告が販売する「携帯カバー及び保護ケース」と本件商標の指定商品とは類似すると認定することはできない。

商品が類似するとは、二つの異なった商品が機能、材料、生産者又はその他の要素において同一又は関連する点があることを指し、一般社会通念及び市場取引状況により、それらが同一又は同一ではないが出所が関連すると容易に消費者に誤認させる場合、この二商品は類似関係が存在する。本件商標の指定商品「各種かばん・手提げ袋・旅行かばん及び革財布」について、その機能はあくまで個人が身につける又は旅行に使用するものであり、被告が販売する携帯カバー及び保護ケースは、携帯が汚損しないよう保護することが目的であり、両者の機能は同一ではない。さらに、販売チャネル、販売場所及び消費者層等の要素においても同一又は関連する点はなく、被告が販売する携帯カバー及び保護ケースと、本件商標の指定商品は同一又は類似ではない。

本件の商標権者即ち告訴人であるスイス企業シャネル製造の皮製品・服飾等の商品は世界に名だたる企業で一般人も熟知している。本件において押収された商品は、その材質、部品、製造工程のいずれにおいても粗雑であり、販売価格も告訴人が生産する真正品とはその差が甚だしい等の事情より、同一又は類似の商標であったとしても、一般社会通念及び市場取引状況により、同一又は同一ではないが出所が関連すると容易に一般消費者に誤認させることにはならない。

以上の事実を総合的に判断すれば、被告の行為は商標法第97条規定の商標権侵害の商品を販売を意図した展示には該当しない。

弊所コメント

指定商品の類否判断は、台湾特許庁制定の類似商品役務審査基準が参考とはなるが、出願時の審査ではなく訴訟時(特に侵害訴訟)においては、一般社会通念及び市場取引状況を参酌し、商品役務の各種関連要素について総合斟酌され、類似商品役務審査基準において類似群コードが同一である商品であっても、非類似と認定されることは少なくない。二商品間において機能、販売チャネル、販売場所及び消費者層等の関連性が低い場合に加え、本件のように模倣品の材質、部品、製造工程や販売価格が真正品よりはるかに低い場合は、両者は非類似と認定される可能性が高まる。

购物车

登入

登入成功