台湾 特許権者は無効審判の行政救済段階で訂正を行い得るか、その必要性及び実益

Vol.29(2016年11月24日)

台湾専利審査基準の規定により、特許権者が訂正をすることができる時期は以下の通りである。(台湾専利審査基準第二編第九章参照)

  1.        特許権公告後、自発的に訂正を請求可能
  2.        無効審判が請求された場合、答弁書提出と同時に訂正を請求可能

 

よって無効審判が請求された場合、台湾特許庁による請求容認審決又は請求棄却審決がなされる前は、答弁書提出と合わせて訂正の請求をすることが可能である。

 

しかし、台湾特許庁による請求容認審決又は請求棄却審決がされた後、行政救済段階(訴願、行政訴訟、下部のフロー参照)に入った場合、権利者は訂正を行うことが出来るか否かについては、無効審判における審決内容により異なる。具体的には以下の通りとなる。

 

  1. 無効審判の請求容認審決がされた場合

 

特許権は既に存在しないため、行政救済段階では訂正を行うことができない

 

  1. 無効審判の請求棄却審決がされた場合

 

特許権はまだ有効に存在しているため、訴願段階において権利者は台湾特許庁に訂正の請求を行うことが出来る。訴願が認められなかった場合、知的財産裁判所に行政訴訟を提起すれば、知的財産裁判所による審理段階においても台湾特許庁に対し訂正の請求を行うことができる

 

知的財産案件審理法第33条の規定によれば、無効審判請求人は行政訴訟段階において新たな証拠を提出できる。行政訴訟段階において無効審判請求人が新たな証拠を提出し、裁判所がその新たな証拠によれば当該特許権は無効であると認めるに足りると判断したケースを考える。ここで仮に特許権者が台湾特許庁に訂正の請求を行っていなかった場合、裁判所は台湾特許庁に対し無効審判請求容認審決を出すよう直接命じる判決を下すことが出来る(最高行政裁判所2015年度4月第1回裁判長裁判官会議決議)。逆に、もし特許権者が台湾特許庁に訂正の請求を行いその旨を裁判所に陳述した場合、最新の裁判所見解によれば(最高裁判所2016年度判字第337号判決)、裁判所は台湾特許庁に対し無効審判請求容認審決を出すよう直接命じる判決を下すことが出来ず、台湾特許庁による訂正の請求の処分結果を待たなければならない。裁判所は台湾特許庁による訂正の請求の処分結果に基づき、特許権は取消されるべきか否かを判断することになる。

 

つまり、特許権者は行政訴訟段階において、無効審判請求人が新たな証拠を提出することで自身の特許権が無効とされる恐れがあると判断した場合は、台湾特許庁に対し訂正を請求するとともに、裁判所へ訂正の請求をした事実を陳述すべきである。こうすることで裁判所が台湾特許庁に対し無効審判請求容認審決を下すよう命じる判決を下し、特許権が取消されることを回避することができる。訂正する範囲については、台湾特許庁が受け入れ可能な訂正の範囲について明確にするためにも、台湾特許庁の審査官と密に連絡を取り出来る限り良好な関係を保たなければならない。こうすることで、台湾特許庁が訂正の請求を認めない処分を出し、結果的に裁判所が台湾特許庁に対し無効審判請求容認審決を出すよう直接命じる判決を下すことを避けることができる。

 

 

【台湾無効審判の行政救済フロー】


 

 

キーワード:特許 台湾 無効審判 訂正 

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