台湾における地名商標の識別力と保護の限界 ―「YORKSHIRE TEA」商標事件を中心に
Vol.154(2026年1月14日)
事件経緯
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英国BETTYS & TAYLORS社が販売する YORKSHIRE TEA |
台湾BARISTA COFFEE社が販売する 極上ヨークシャーミルクティー |
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画像元:B&T公式サイト
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画像元:BARISTA COFFEE公式サイト
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英国BETTYS & TAYLORSグループ(BETTYS & TAYLORS GROUP LTD、以下B&T社)は、2017年に「YORKSHIRE TEA」商標を台湾特許庁に出願し、第30類の茶類関連商品を指定商品とした。
しかしながら、B&T社が提出した使用証拠に基づき審査を行った結果、台湾特許庁は、本件商標が既に使用による識別力を獲得していると認め、同法第29条第2項に基づき登録を認めた。
その後、馥餘実業股份有限公司(旧名:台湾BARISTA COFFEE社、以下馥餘社)が、本件商標は商品の産地について消費者に誤認を生じさせるものであり、識別力を有しないとして、台湾特許庁に対し、無効審判請求を行った。
台湾特許庁は馥餘社の主張を退ける審決を下し、その後に馥餘社より提起された訴願も棄却され、行政訴訟を提起したが、知的財産及び商業裁判所は、審理の後、訴えを退ける判決を下した。
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本件商標 |
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登録番号 第02179600号 |
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指定使用商品:第30類「ティーバッグ;ハーブティー;茶;ハー バルティー;フルーツティー;茶葉パック;アイスティー」等。 |
本件における法律上の争点
台湾商標法において、台湾商標法第29条第1項第1号で規定される商品の産地又は関連する特性等を記述する文字のみで構成される商標、又は、同条第3号で規定されるその他識別力を有しない標識のみの商標に該当する場合については、登録が認められない。
したがって、本件「YORKSHIRE TEA」商標が、英国に古くからある地名「YORKSHIRE」と、商品名である「TEA」から構成されており、その登録が上記規定に違反するかどうかが、本件の争点となった。
裁判所の見解
台湾知的財産及び商事裁判所は、台湾商標法第29条第1項第1号及び第3号の規定に違反する商標について、登録は認められないが、同条第2項の規定を満たし、使用による識別力を獲得している場合には、既に商標としての機能を有するものと判断し、登録が認められるとしている。
馥餘社は、B&T社が提出した証拠資料はいずれも海外でのマーケティングに関する資料であり、台湾における使用状況を証明するものではないと主張した。さらに、英国ヨークシャー(Yorkshire)という地名が、消費者に対して当該商品が英国ヨークシャーで製造・生産・設計・使用されたものであると説明しているものであると連想させ、識別力を有しない等とも主張した。
しかし、裁判所は、本件「YORKSHIRE TEA」商標について、以下の理由に基づき、B&T社が台湾において使用による識別力を既に獲得していることを証明するのに十分であると認め、馥餘社の訴えを棄却した。
1. 使用による識別力を獲得したかどうかは、商標の使用期間、商品の表示方法、市場でのマーケティング状況、消費者の認識等の要素を総合的に観察して判断すべきである。
2. B&T社が1970年代末から「YORKSHIRE TEA」を茶葉ブランド名としており、英国国内で長年にわたり経営し、多くの国で商標の登録が認められていることや、台湾でも2000年から、百貨店、スーパーマーケット、コーヒーチェーン店、ECプラットフォーム等を含む多くの実店舗及びオンライン店舗で安定して販売されており、市場シェア及び認知度が継続的に向上していると認定した。
3. B&T社が提出した証拠には、本件商標「YORKSHIRE TEA」を使用している商品実物のパッケージ、販売チャネルでの陳列写真、台湾の販売代理店を通じた取引記録、ブランドプロモーション資料等が含まれており、これらは本件商標が台湾において長期且つ一貫して使用され、台湾市場において特定の出所との関連性を確立していることの証明に十分である。したがって、消費者が当該商品に接する際、「YORKSHIRE TEA」の文字によって出所を識別でき、単なる記述的語句として用いられているものではない。また、馥餘社の主張は、使用証拠の一部を切り取って反論しているものであるため、採用するには不十分である。






