「人で表現されたLVモノグラム」はパロディなのか商標権侵害なのか?台湾裁判所による最新実務見解の分析

Vol.139(2024年4月11日)

ポップカルチャー、ブティックブランドのロゴなどにインスパイアされ、独創的アイデアを付け加えたり、その他の要素を変更したりした「パロディ」作品が、近年の新たな流行となっている。しかし、パロディ作品が単なるオマージュなのか、それとも関連の法律に違反するものなのかについては疑問が残る。パロディ制作者たちは、自分たちの作品を「パロディ」、つまり他人の商標を模倣したり、作り変えたりして、ユーモア、風刺又は批判等の娯楽性を持たせた作品であると主張することがよくある。しかし、ブランドの権利者にとって、パロディ作品は自身のブランド商標を利用して作り変えられたものであることに相違なく、また消費者がパロディ品とオリジナルブランドを区別できないことも多々あるため、商標権侵害の疑いがあるのは明らかである。

台湾のファッションアパレルブランド「MF BY G.C.D.C」は、ブティックブランドのロゴをベースに、肖像や人形の要素を加えて新たにデザインを行い、「パロディ」をコンセプトに、アパレルやスーツケースのシリーズ商品を旗艦店で販売していた。しかし、フランスの有名なブティックブランドであるLOUIS VUITTON MALL ETIER社(以下、ルイ・ヴィトン社)は、当該行為がルイ・ヴィトン社の商標権を侵害していると主張し、刑事告訴を提起した。

(画像引用元:https://www.chinatimes.com/realtimenews/20220222004532-260402?chdtv)

台北地方裁判所は本件の判決において、以下のように指摘している。
「パロディは、大衆に既に認知されている商標を対象とした、原作品と異なるユーモア、風刺又は批判等の娯楽性を有する模倣でなければならず、また消費者の混同誤認を引き起こすか否か、模倣者の表現の自由の権利が保障されているか否かの2つの公共の利益のバランスをよく考慮しなければならない。しかし、被告商品のデザインについて、内政部警政署保安警察第二総隊が書簡で台湾特許庁に意見を求め、台湾特許庁が被告商品とルイ・ヴィトン社の登録商標との対比を行ったところ、両者のデザイン及び構図が類似している箇所は、消費者の混同誤認を引き起こす可能性があるため、類似商標に該当すると認定された。また、被告が販売する被服、鞄、及びスーツケースについても、ルイ・ヴィトン社の登録商標の指定商品と同一である。よって、被告の行為はパロディではなく、ルイ・ヴィトン社の長年の経営により培われたブランドの信用を利用し、自己の商品の販売を促進させ、利益を得る『フリーライド』的行為であり、ルイ・ヴィトン社の商標権を侵害している。」
被告「MF BY G.C.D.C」の責任者2名にはそれぞれ6か月、5か月の懲役を科すという判決が下された。

著名ロゴが有する高い知名度とパロディ要素がもたらす面白さにより、近年パロディが流行し、関連する作品も多くの消費者に受け入れられている。しかし、パロディ作品を制作する際には、消費者がそれと著名ロゴの違いを明確に区別できるようにするほか、作品がパロディとしての娯楽性及び創作上の芸術性を備えるよう注意しなければならず、こうしてはじめて成功したパロディ作品を創作できる。

 

キーワード:台湾 商標 商標類否 判決紹介 侵害

 

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