台湾 「商標法の一部改正草案」が2023年5月24日に総統府より公布-早期審査制度規定の追加

Vol.128(2023年6月2日)

〈台湾商標法の一部改正草案〉が2023年5月9日に台湾立法院で三読通過し1、 5月24日に総統府より公布された2。改正法の施行日は後日行政院より発表されるという。今回の法改正により、商標権者にとって有利な制度が多数追加された。主な改正ポイントは次のとおりである。

一、商標法登録出願の早期審査が可能

改正案第19条第8項の早期審査では、出願人は、早急に権利を取得する必要がある場合(侵害訴訟による権利確認、又は既に市場に出回っている商品への対応等特殊なニーズがある場合)、事実及び理由を陳述し、早期審査費用6,000台湾ドルを納付することで、早期審査を申請することができ、審査時間は2ヵ月に短縮されると規定されている。ただし、台湾知的財産局が既に補正又は拒絶理由を通知している場合は、早期審査を利用することができない。

二、商標代理人の管理に関する規定

改正案第6条第2項第2号、第3項の商標代理人制度では、商標の専門能力を有する者のみを商標代理人とし、登録及び職業研修の終了後にのみ商標代理業務を行うことができると規定されている。

三、「指名的フェアユース(nominative fair use)」の明文化

改正案第36条第1項第2号では、「商業取引の習慣に該当する信義誠実の原則に従い、商品又はサービスの使用目的を表示する場合であって、他人の商品又はサービスを示すために他人の商標を使用する必要がある場合」という規定により「指名的フェアユース(nominative fair use)」が権利侵害とならないことが明文化されている。

例えば、携帯電話の修理サービスを提供する店舗の看板に、各携帯電話メーカーの商標を使用して、提供するサービスに対応する携帯電話のメーカーを示している場合は、権利侵害にならない。

四、税関押収手続きの簡素化

改正案第75条第2項では、税関が輸出入商品が商標権を侵害している虞があることを商標権者に通知した後、商標権者が必ずしも自ら税関に赴き侵害認定を行う必要が無いことが規定されている。商標権者が税関において「真贋判定のポイントに関する説明」の登録を完了していれば、押収された輸出入商品に商標権を侵害している虞がある場合、税関の「商標権侵害識別デジタルプラットフォーム」が提供する写真ファイルを用いて、侵害品か否かを判断することができる。

また、知的財産局は、異議申し立て、無効審判の審理及び関連する救済手続き、商標権消尽の原則、機能的要素を表わす商標の登録要件等に関連する規定についても更にもう一つの「商標法の一部改正草案」において規定している。なお、これら改正草案は、現在立法院で審理中であり、立法院の三読会を通過後に改めて紹介したい。

キーワード:台湾 商標 法改正

 

登入

登入成功