中国改正専利法が2021年6月1日施行へ

2020年10月18日

中国専利法の改正案が中国全国人民代表大会常務委員会より可決された。改正法は2021年6月1日から施行される。今回の改正内容は懲罰的損害賠償(商標法では既に導入済み)などの権利行使時の保護拡大、意匠の保護拡大や開放許諾制度の導入など多岐にわたる。以下、その概要を紹介する。(中国全国人民代表大会常務委員会の交付内容はこちら

権利行使時の保護拡大

損害賠償について、故意の侵害で状況が深刻な場合、懲罰的損害賠償として最高5倍までが認められるようになった(71条)。次に法廷賠償額が従来の1万元以上100万元以下から、3万元以上500万元以下へと引き上げられた(71条)。そして賠償金額計算の際に、一定条件の下、侵害者に対し侵害と関連する帳簿や資料の提出を命ずることができると規定された。侵害者がこの要求に応じない場合は、裁判所は権利者の主張及び権利者が提出した証拠を参考とし、賠償金額を定めることができる(71条)。さらに、全国的に重大な侵害事件については、中国国家知識産権局が行政取締りを行うことができると明文規定された(70条)。ただし、「専利出願又は専利権行使は誠実信用原則を順守しなければならず、公共利益又は他人の合法権益を害するような専利権の濫用をしてはならない」という条文も追加されている(20条)。

意匠の保護拡大

まず、部分意匠制度が正式に導入されている(2条)。そして意匠権の保護期間は現在出願日から10年であるが、これが出願日から15年へと延長された(42条)。また意匠の場合、現在パリ優先権は認められているが国内優先権主張が認められていない。今回の改正により国内優先権主張が認められるようになった(29条)

開放許諾制度の導入

権利者は自己の特許権についていかなる単位又は個人による実施を認める開放許諾制度が導入されている(50条)。開放許諾は通常実施権のみであり、専用実施権や独占通常実施権は認められない。開放許諾期間中の特許料は支払いが減免される。開放許諾は取り下げることが可能であるが、既に許諾済みのものへ効力は及ばない。開放許諾は特許、実用新案及び意匠に適用されるが、実用新案及び意匠の場合は無審査で登録となるため、専利権評価報告の提出が必須である。

その他

現在、優先権証明書の提出期限は特許、実用新案及び意匠のいずれも出願日から3カ月以内であるが、特許及び実用新案について期限が優先日から16カ月以内へと延長された(30条)。次に中国では新規性喪失例外の事由は限定列挙されているが、ここに「国家が緊急状態又は非常状況にある場合、公共利益目的で最初に公開したもの」という内容が追加された(24条)。現在特許を受けることができない発明に原子核の変換方法を用いて得られた物質が規定されているが、今回「原子核の変換方法」そのものが特許を受けることができない発明に追加された(25条)。審査が遅延した際の存続期間の補填制度が規定された。これは特許の出願日から4年が経過し、かつ審査請求日から3年を経過した後に特許が付与された場合、審査の不合理な遅延に基づき存続期間の補填請求が認められる(42条)。

専利権評価報告書は現在権利者又は実施権者のみが請求可能であるが、改正により権利者、利害関係人又は被疑侵害者が請求できるようになった(66条)。また、職務発明に関する規定が追加されている。部門(日本法における使用者等)は、職務発明に係る特許を受ける権利及び特許権について、法に基づき処置できると規定され(6条)、さらに職務発明に係る特許権を付与された部門に対し、財産権のインセンティブの実行や株式、オプション取引、配当等の方法を採るよう、国家が奨励すると規定された(15条)。

 

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