台湾 立法委員から提出されたスペアパーツの意匠保護制限を導入する台湾専利法改正草案の紹介及び今後の動向

Vol.74(2020年9月18日)

2017年に、台湾の自動車ヘッドライトメ-カーDEPO(帝寶)が、ダイムラーから意匠権侵害で訴えられた事件において、DEPOに対し3000万台湾ドルの賠償金支払いを命じる一審判決が出された。そして今年に入り、この事件に関するメディアの記事が増え、専利法においていわゆる修理条項(Repair Clause)を導入すべきだという意見が見られるようになった。

2020年4月24日、このような声を受けて台湾の自動車部品メーカーの要求を受け、国会議員が改正草案を立法院に提出した。そして今週の立法院会期にて検討がされる予定である。以下、この改正草案の内容、改正草案に対する台湾特許庁の姿勢、及び今後予想される動向について紹介する。

改正草案の内容

改正草案の内容は、修理・交換に用いるスペアパーツの修理には意匠権の効力が及ばないようにする、というものである。具体的には、現行専利法第136条(意匠権に関する規定)に「意匠権の効力は、車又はその他の車両についてその本来の外観を回復させる部品の修理には及ばない。」という内容を追加することが提案されている(「立法院第10屆第 1會期第10次會議議案關係文書」委170~172頁)。

条文(現行) 条文(改正草案)
第136条
意匠権者は、本法で別段の定めがある場合を除き、他人が同意を得ることなく自らの意匠又はこれに類似する意匠を実施することを排除する権利を専有する。
意匠権の範囲は図面を基準とし、説明書を参酌することができる。
第136条
意匠権者は、本法で別段の定めがある場合を除き、他人が同意を得ることなく自らの意匠又はこれに類似する意匠を実施することを排除する権利を専有する。
意匠権の範囲は図面を基準とし、説明書を参酌することができる。
意匠権の効力は、車又はその他の車両についてその本来の外観を回復させる部品の修理には及ばない。

台湾特許庁の姿勢及び今後予想される動向

今回の専利法改正草案は、近日中に立法院経済委員会による審理がされる予定である。一方、台湾特許庁は現段階では専利法改正案を自発的に提出する予定もなく、改正内容に関する立場も表示しない姿勢であり、立法院での検討段階で立法院から意見表示を求められた際に、台湾特許庁の立場及び応対方針を決定する見込みである。

現在のところ、実際にこの条項が導入されるかどうかは不明であり、たとえ導入が検討され始めたとしても実際の導入にはかなり時間がかかると思われる。ただ、スペアパーツの意匠保護制限について導入が決定されたとなれば、関連業界の特許権者にとって与える影響は小さくなく、今後の動向に注視すべきと考えられる。

キーワード: 法改正 意匠 台湾

 

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