台湾 進歩性における引用発明の課題共通性に関する判例(自転車ハブ構造事件)

Vol.17(2014年4月22日)

事件の概要

本件は「自転車ハブ構造の改良」登録実用新案に対する無効審判無効審決取消訴訟である。実用新案の事案であるが、進歩性の判断基準、特に引用発明の課題共通性に関し参考になる事例である(知的財産裁判所2011年度行専訴字第120号)。

本件実用新案の請求項1に係る考案(本件考案)は、自転車ハブ構造の改良に関するものであり、フレームと結合固定される軸心を有し、軸心の中間位置にはハブ主体が枢設され、ハブ主体の一側にはラチェット槽が設けられている。ラチェット槽にはチェーンホイール結合座がありチェーンホイール結合座上にはチェーンホイールが結合されている。またハブ主体のラチェット槽とチェーンホイール結合座の間にはラチェット結合が設けられている。当該請求項は、チェーンホイール結合座の穿孔部に自己潤滑軸受を枢設部品として用いており、自己潤滑軸受は自己潤滑、耐摩耗性、軽量、薄壁設計、高負荷可能な材質等の特性を有し一体形成されるもので、穿孔の孔に合うように設置され、中心には嵌合孔を有し軸心と結合でき、自己潤滑軸受の一端には位置決めフランジが凸設されていることを特徴としている。このような構造により、自己潤滑軸受はチェーンホイール結合座の穿孔部に設置され、端部の規制フランジはチェーンホイール結合座の穿孔端に規制され、チェーンホイール結合座は自己潤滑軸受と共に嵌合孔により軸心上に嵌合され、ロック部材よりロックすることができる。

本件実用新案の明細書の図面において、公知技術の自転車ハブ構造が開示されている。以下に本件考案の図及び当該公知技術の図を示す。

本件考案の図 公知技術の図

本件考案は、自転車が衝突又はジャンプした際に公知のハブ構造ではボール軸受がチェーンホイール結合座と軸心の枢設部品として用いられているため、ボール軸受けが破損しやすいという課題を解決するものである。この課題を解決するための手段として、ボール軸受けの代わりに位置決めフランジを有する自己潤滑軸受けをチェーンホイール結合座と軸心の枢設部品として用いるという構成を採用している。

知的財産裁判所の見解

軸受(bearing)は構造と軸の間をつなぐ部品として長期にわたり使用されており、その機能及び特徴により各種の軸受に分類される。自己潤滑軸受(self-lubricated bearing)は、自己潤滑、耐摩耗性、軽量、薄壁設計、高負荷可能な材質等の特性を有し、当業者にとってこの軸受は通常知識に属する。自転車構造の設計者は、軸受メーカーが提供する商品カタログから各種軸受のサイズ規格や特性を理解することができ、使用状況に応じて適切な軸受を選択することが可能である。よって、当業者からすれば、複数のボールベアリングを使用した自転車ハブ構造では衝撃により切断しやすいという問題に直面したとき、証拠3(軸受商品、規制フランジ形構造という特徴を有する自己潤滑軸受)を参酌した後、これと証拠2(公知のハブ構造、上記図参照)とを組み合わせて、要求を満たすにふさわしい自己潤滑軸受を選択する動機が存在する。つまり、証拠3の自己潤滑軸受を証拠2の公知自転車ハブ構造に応用し、自転車のハブのチェーンホイール結合座と軸心の間をつなぐ部品として用いることで、本件考案の課題を解決することができる。

原告(特許権者)は、本件考案は自己潤滑軸受を使用することで自転車ハブのチェーンホイル結合座が小さく軽量となり、前後チェーンホイールの歯数も減少する等の予期せぬ効果を奏する、と原告(即ち権利者)は主張する。しかし、本件明細書には自己潤滑軸受とハブ構造の両者間における重量、各部品間の組立て関係、チェーンホイールの組合せ等その他の派生的な効果に関する具体的な記載又は説明が一切なく、原告が主張する上記効果は、本件考案が解決しようとする課題とは関連がないことは明らかである。さらに、原告が主張する効果は単にボールベアリングを自己潤滑軸受に置換するという技術手段により奏するものではなく、自転車全体の構造設計、使用する材質、製造方法、構造の組合せ、使用要求等の様々な要因を総合的に考慮しなければ論ずることは出来ない。よって原告の主張は採るに足らない。

 

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