サポート用件に関する台湾及び中国の比較

Vol.18(2014年6月16日)

台湾

台湾の専利法第26条第2項では次のように規定されている。「特許請求の範囲は出願に係る発明を限定しなければならない。特許請求の範囲は1項以上の請求項を含むことができ、各請求項は明確、簡潔な方法で記載し、明細書で支持されていなければない。」。

また、専利審査基準では次のように規定されている。「当業者が出願時の通常知識を参酌し、一般的な実験又は分析方法を利用することで、明細書で開示された内容から請求項の範囲まで合理的予測又は拡張ができるとき、請求項は明細書で支持されていると認定しなければならない。」「当業者が明細書で開示された内容に基づき、出願に係る発明を直接得ることができるか又は総括して得ることができるよう、請求項は実質的に明細書で支持されていなければならない。」。

図面での支持に関し、専利審査基準では「図面のみで支持されている場合は十分ではなく、図面で支持されている部分を明細書に記載しなければならない。但し図面は発明関連内容を形式的に開示するに留まるものであり、図面では発明の実質技術内容を開示できないことが一般的である。よって、出願人は補正により図面で開示された内容を明細書に記載した場合、審査の際は出願時の通常知識を参酌し、新たに追加された内容が実質的に請求項を支持しているか否かを判断しなければならない。」。この点に関し、図面で請求項1の技術特徴が開示されてはいるが、明細書には対応する技術特徴が記載されていなかったため、請求項1は明細書で支持されておらずサポート要件違反であると判断した事例がある(2013年経訴字第10206094920号決定)。

この他サポート要件に関し、専利審査基準の規定は次の通りである。「請求項が出願人の推測した内容を含みその效果を容易に確定できない場合は、請求項は明細書に支持されていないと認定しなければならない。例えば、請求項の記載が『コールドショックで植物の種を処理する方法』であり、明細書には単に当該方法は1種の特定の植物の種にのみ適用されると開示されているが、他の植物の種に適用できるとは開示されていない場合、当業者は他の植物の種を処理しても同じ效果が得られるかを確定できないため、当該請求項の記載は明細書により支持されていないと認定しなければならない。」「明細書の記載内容が不明確又は不充分である場合、例えば一般的な実験又は分析方法を利用することで、明細書で開示された内容から請求項の範囲まで導き出すことができない場合、出願人に対し意見書の提出又は請求項の補正を通知しなければならない。例えば請求項の記載が『合成樹脂成型物の性質を処理する方法』であり、明細書には単に熱塑性樹脂の実施例が開示されているに過ぎず、当該方法が熱硬化性樹脂にも適用できることが証明できない場合、当該特許請求の範囲は明細書により支持されていないと認定しなければならない。又、例えば請求項の記載が『燃料組成物の改良』であり、使用する如何なる触媒も記載されておらず、明細書には触媒の添加が必須であり触媒を添加することで当該燃料を得ることができるとのみ開示されている場合は、当該特許請求の範囲は明細書により支持されていないと認定しなければならない。」。

サポート要件違反により拒絶や無効となる事例はあまり多くないが、以下にサポート要件違反で拒絶査定となり、取消訴訟においても拒絶査定が維持された事例を紹介する(2012年行専訴字第42号)。

本件は発明の名称を「記憶力減退改善薬物組成物及びその用途」とする特許出願の拒絶査定審決取消訴訟である。知的財産裁判所は以下のように述べ、本件請求項の記載はサポート要件違反であると認定した。「本件請求項1に係る発明は血液のpH値を低下させる薬学組成物であり、アセチルコリンエステラーゼ酵素を阻害し、アルツハイマー病による記憶力減退を改善するものである。しかし発明の詳細な説明には関連学理説明のみが開示されているに過ぎず、記載されたカルボン酸が確かに血液pH値を低下させアセチルコリンエステラーゼ酵素を阻害しアルツハイマー病による記憶力減退を改善する効果を達成することを確実に証明する明確かつ科学実証を有する薬理数値は記載されていない。よって本件特許請求の範囲には出願人の推測した内容が含まれ、その効果を容易に確定できず、出願時の発明の詳細な説明で開示された範囲を超えており、発明の詳細な説明で支持されていない。」

中国

中国專利法第26条第4項では次のように規定されている。「権利要求書は説明書を依拠とし、特許保護請求の範囲について明確かつ簡潔に要求を限定する。」。中国裁判所の2010年から2012年における統計資料によれば、サポート要件違反は、中国裁判所と専利複審委員会の認定が異なる理由で2番目に多いものとなっている(最多は進歩性)。

昨年開かれた「専利授権確権行政案件法律問題研討会」では、サポート要件違反に関する見解が示された。

サポート要件違反の判断基準について

サポート要件違反を判断する際、特許請求の範囲の保護範囲、明細書で開示された内容、発明の実体、従来技術の状況、当業者の実験能力や分析レベルを考慮し、総合的に判断を行わなければならない。具体的には、まず明細書の実施例に記載された内容及び明細書の背景技術の原理を理解し、当業者の常識と実施能力とを結合しなければならない。

立証責任について

無効審判請求人がサポート要件違反で無効審判を請求した場合、審判請求人の立証責任は「合理的疑い」を証明するだけでよい。一方、特許権者は裁判官に「心の底から確信させる」程度の立証を行わなければならない。即ち、立証責任は特許権者の方が重く、審判請求人からサポート要件違反が主張された場合、特許権者がサポート要件を満たすことを立証しなければならない。

その他

専利審査指南の規定では、特許請求の範囲の内容は最大で実施例の「同等代替方式」又は「明らかな変形方式」まで概括することができる。但し「同等代替方式」又は「明らかな変形方式」をどのように認定するかについて明確な定義は示されていないため、実務上よく問題となる。北京高級人民裁判所は、「同等原則」を参考にして判断を行うことができるという見解を示している。つまり、基本的な手段により、基本同一の機能を実現し、基本同一の効果を達し、かつ当業者が創造性労働を要することなく連想できるものは、『同等代替方式』又は『明らかな変形方式』であると認定できる、というものである。

キーワード:特許 記載要件 台湾 中国

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