2014年「台湾中国両岸専利フォーラム」 中国意匠に関する講演について

Vol.22(2014年11月3日)

2014年の10月14日、15日に「台湾中国両岸専利フォーラム」が台北にて開催された。台湾・中国の民間企業、行政機関、学術機関、研究機関各界にわたる200名が参加、さらに中国からは中国国家知識産権局副局長の何志敏、専利代理人協会会長の楊梧、広東省知識産権局局長の馬憲民、山東省知識産権局副局長の劉鴻鋒等41名が来台した。

台湾及び中国は2010年の「海峡両岸智慧財産権保護合作協議」締結により専利で優先権を相互に受理することとなり、台湾が受理した中国の優先権主張出願は既に1万件を超え(2014年6月現在11,957件)、中国が受理した台湾の優先権主張出願も2万件近くにのぼり、台湾及び中国への同時出願の件数も増加している。

今回のフォーラムのテーマは「知的財産権発展の動向と傾向」、「意匠出願の実務探求」、「専利審査協力の探求」、「専利司法救済実務事例の共有」、「専利権侵害救済実務の発展と傾向」であった。今回はこのテーマから中国意匠出願について取り上げる。中国の意匠出願件数は驚くべき速度で成長しており、出願件数は1985年の640件から2007年には267,668件へと増加、2008年には312,904件にまで達し、中国の意匠出願件数は世界一となっている。しかし、意匠権は安定性がよいとは言えず、権利者による軽率な権利行使により、意匠権紛糾事件が後を絶たない。このような事態を受け、2009年10月1日に施行された第三回改正専利法では意匠権制度に大幅な変革を加えた。まず中国専利法第23条の規定及び実務の現状について紹介する。

新規性

中国専利法第23条第1項前段は「新規性」に関して「専利権を付与する意匠は、既存の設計に属さないものとする。」と規定しており、既存の設計と同一(同一又は実質同一を含む)な意匠は登録を受けることができない。「意匠が同一」とは、二つの意匠において製品の種別が同一であり、且つ設計要素(要素とは形状、図案及び色彩を指す)が同一であること、を指す。両意匠の相違点が、通常使用される材料の代替のみである、又は製品の機能、内部構造、技術性能、製品の大きさのみであって、意匠に変化をもたらさない場合、両者は同一の意匠に属する。

専利審査指南では意匠の実質的に同一について「意匠の実質的同一の判断は、製品の種別が同一又は類似である意匠に限る。」と規定しており、二つの意匠の製品種別が同一でも類似でもない場合は、両意匠は実質的同一ではないと認定される。例えば、タオルとカーペットの意匠がこれに当たる。製品種別が類似とはその用途が類似であることを指す。製品用途が多岐にわたる場合は、一部の用途が同一であれば他の用途が異なっていても、両者の製品種別は類似に属する。例えば、MP3付き腕時計と腕時計がこれに当たる。

意匠の実質的同一における判断主体は、製品の消費者である。一般消費者の認知水準と認知能力に基づき評価を行い、製品種別により有する消費者群は異なる。一般消費者が二つの意匠について全体観察を行った結果、両者の相違点が以下のような場合は、両者は実質的同一に属すると判断される。

  • 相違点が、一般注意力では知覚できない細部のわずかな違いにとどまる。例えば、ブラインドの意匠において羽根の数が異なる場合。
  • 相違点が、使用時に容易には見ることができない又は見えない部分である。例えば、掛け時計の後部、車の底部。但し、容易には見ることができない部分の意匠が一般消費者に注目させるような視覚効果があることを示す証拠がある場合を除く。
  • 相違点が、ある意匠要素全体を当該製品の慣用意匠に対応する意匠要素への置換に該当する場合。例えば、図案と色彩を有する菓子箱の形状を正方体から長方体へ置換した場合。
  • 相違点が、対比意匠を意匠一単位として、当該種別製品の慣例配置方法に基づく再配置である又は配置数量の変更に該当する場合。例えば、ソファーチェア又は染色機において、配置数量が異なる場合。
  • 鏡像の対称である場合。例えば、車、バイクのサイドミラーの右側と左側。

創作非容易性

専利法第23条第2項は「創作非容易性」に関して、「専利権を付与する意匠は、既存の設計又は既存の設計的特徴の組み合わせと比べて明らかな違いがあることとする。」と規定されている。既存の意匠又は既存の設計的特徴の組合せと比較した結果、以下のいずれかの状況に属する場合は、明らかな違いを有しないと認定される。

  • 製品種別が同一又は類似の既存設計と比べて、明らかな違いを有しない。
  • 既存設計の転用により成されるものであり、両者の設計的特徴が同一又は違いが軽微な差異にとどまる。そして、当該具体的な転用手法について、製品種別が同一又は類似の既存設計に教示がある。
  • 既存設計又は既存設計の特徴の組み合わせにより成されるものであり、該既存設計が係争意匠の対応する設計の部分と同一又は違いが軽微な差異にとどまる。そして、当該具体的な組み合わせ手法について、製品種別がの同一又は類似の既存設計に教示がある。

専利審査指南章では、専利法第23条第2項の審査方法について説明され、更に「既存の設計的特徴」、「転用」、「独特な視覚効果」について定義されている。「既存の設計的特徴」とは、例えば既存設計の形状、図案、色彩要素若しくはその結合のような、既存設計における一部の設計要素若しくはその結合、又は全体の意匠製品における部品の設計などのような、既存設計のある構成部の設計を言う。「転用」とは、製品の意匠をほかの種別の製品に応用することを指す。「独特な視覚効果」とは、既存設計と比べて、予想できない視覚効果を生じることを言う。組み合わせた後の意匠において、各既存設計又は設計的特徴が視覚効果上で呼応関係を成さず、各自で独立に存在したり単純に重なっているだけなら、通常は独特な視覚効果を生じない。

キーワード:意匠 中国

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