中国 専利審査指南の重要改訂内容 ~無効審判中の訂正態様の追加及びそれに伴う無効理由追加要件の変更~
Vol.36(2017年3月16日)
中国国家知識産権局が先日公布した専利審査指南改訂版は、2017年4月1日に正式に施行される。ここでは今回の改訂内容のうち影響が最も大きいと思われる、無効審判中の訂正態様の追加及びそれに伴う無効理由追加要件の変更について、紹介する。
【無効審判中の訂正態様の追加】
現行の審査指南では無効審判中の請求項の訂正態様として、請求項の削除、請求項の合併及び技術案の削除の3つが認められる。
改訂版では無効審判中の請求項の訂正態様として、請求項の削除、技術案の削除に加え、請求項の更なる限定、明らかな誤りの修正の4つが規定された。ここで請求項の更なる限定とは、「請求項中にその他の請求項中に記載された一又は複数の技術特徴を補充し、保護範囲を縮小すること」(4.6.2)と規定されている。この訂正態様の追加は権利者にとっては有利な改訂である。ただし、あくまでその他の請求項中に記載された技術特徴を補充することが許され、明細書中に記載された技術特徴を追加することは認められないことに注意すべきである。
【無効審判中の訂正態様の追加に伴う無効理由追加要件の変更】
中国専利法実施細則第67条の規定により、国家知識産権局専利復審委員会が無効審判請求を受理後、請求人は無効審判請求の日から1月以内に理由の追加又は証拠の補充をすることができ、期間を経過した後の理由の追加又は証拠の補充について、専利復審委員会は考慮しない。現行の審査指南では無効審判請求の日から1月経過後であっても、無効審判請求人が「請求項の合併」による訂正を行った場合、専利復審委員会が指定した期限内に無効理由を追加することができることになっている。
改訂版では、無効審判請求の日から1月経過後の無効理由の追加ができる場合に関し、次のように規定された。「権利者が削除以外の方法で訂正した請求項について、専利復審委員会が指定した期限内に訂正内容についての無効理由を追加し、かつ当該期限内に訂正内容について追加した無効理由について具体的に説明した場合」(4.2)。上記1.の訂正態様の追加に伴い、仮に請求項の更なる限定を行った場合も、無効理由の追加ができるとした。一方で、審理の円滑な進行を妨げないよう、無効理由の追加はあくまで「訂正内容について」可能である。
【中国専利審査指南 改訂内容対応表】
現行 |
改訂版 |
4.2 無効宣告の理由の追加 請求人が無効宣告請求の提出日から1ヶ月以内に無効宣告の理由を追加するには、当該期間以内に、追加した無効宣告理由を具体的に説明しなければならない。そうでなければ、専利復審委員会は考慮しない。 請求人が無効宣告請求の提出日から起算して1月後に無効宣告の理由を追加することを専利復審委員会は一般的に考慮しないが、以下に挙げる状況を除く。
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4.2 無効宣告の理由の追加 請求人が無効宣告請求の提出日から1ヶ月以内に無効宣告の理由を追加するには、当該期間以内に、追加した無効宣告理由を具体的に説明しなければならない。そうでなければ、専利復審委員会は考慮しない。 請求人が無効宣告請求の提出日から起算して1月後に無効宣告の理由を追加することを専利復審委員会は一般的に考慮しないが、以下に挙げる状況を除く。
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4.6.2 補正の方式 前記の補正原則の下で、権利要求書に対する補正の具体的な方式は一般的に、請求項の削除や併合と技術案の削除に限る。 請求項の削除とは権利要求書から、一又は複数の請求項を取り除くことを言う。例えば、独立請求項或いは従属請求項。 請求項の併合とは、相互に従属的な関係を持たないが、授権公告書類においては同一の独立請求項に従属する2つ或いはそれ以上の請求項の併合を言う。この場合、併合対象従属請求項の技術的特徴の組み合わせにより新規の請求項を成す。当該新規請求項は、併合された従属請求項の全ての技術的特徴を含めなければならない。独立請求項は補正がなされていない限り、その従属請求項に対する併合方式の補正が許されない。 技術方案の削除とは、同一の請求項において並列している2種以上の技術方案から1 種或いは1種以上の技術方案を削除することを言う。 |
4.6.2 補正の方式 前記の補正原則の下で、権利要求書に対する補正の具体的な方式は一般的に、請求項の削除、 請求項の削除とは権利要求書から、一又は複数の請求項を取り除くことを言う。例えば、独立請求項或いは従属請求項。
技術方案の削除とは、同一の請求項において並列している2種以上の技術方案から1 種或いは1種以上の技術方案を削除することを言う。 請求項の更なる限定とは、請求項中にその他の請求項中に記載された一又は複数の技術特徴を補充し、保護範囲を縮小することをいう。 |