中国 2026年1月1日より新たに施行される「専利審査指南」における発明の進歩性判断基準

Vol.153(2025年12月23日)

 中国国家知識産権局は、2025年11月に「専利審査指南」の改正決定を公表した。改正版の当該「専利審査指南」は、2026年1月1日に正式に施行される予定である1
 今回の改正には、発明の進歩性判断基準、人工知能の倫理審査、アルゴリズム及びデータ関連発明の公開と進歩性判断、ビットストリーム特許の審査、同日出願制度の調整、並びに無効審判請求手続きなどの制度の改善が含まれている。
 本稿では、「発明の進歩性判断基準(第二部分第四章第6.4節)」の規定改正について紹介する(追加部分は下線で表示する)。その改正内容は、主に請求項の解釈方法に関する説明や、請求項に記載された要素の進歩性判断に対する影響に関連するものであり、出願人の注目に値する。

請求項の技術方案全体に対して進歩性判断を行わなければならない

 
「発明の進歩性の有無は、保護を要求する発明を対象に判断する。そのため、発明の進歩性に対する評価は、請求項で限定された技術方案に対して行わなければならない。進歩性を判断する際には、請求項で限定された技術方案全体に対して評価を行わなければならず、即ち、ある技術的特徴の進歩性の有無を評価するではなく、技術方案の進歩性の有無を評価しなければならない。(第二部分第四章6.4 保護を要求する発明に対する審査)
 
 まず、今回の改正では、発明の進歩性認定において、ある技術的特徴に対して評価を行うではなく、請求項で限定された技術方案全体に対して進歩性の有無を判断しなければならないことが改めて明確に示された。

技術的貢献を有する特徴は請求項に記載しなければならない

 
「発明における先行技術に貢献をもたらす技術的特徴(例えば、発明に予期せぬ効果をもたらす技術的特徴、又は発明が技術的偏見を解消したことを体現する技術的特徴)は、請求項に記載しなければならない。そうでない場合、たとえ明細書に記載されていても、発明の進歩性を判断する際には考慮に入れない。技術的課題の解決に貢献しない特徴は、たとえ請求項に記載されていても、通常、技術方案の進歩性に影響を与えない。(第二部分第四章6.4 保護を要求する発明に対する審査)
 
 次に、当該発明が、予期せぬ効果を奏する又は従来の技術的課題を解消できる特徴を有する場合、請求項に記載しなければならない。そうでない場合、進歩性を判断するための要素と見なされない。また、解決しようとする技術的課題に実質的に貢献しない技術的特徴もまた、進歩性判断に影響を与えない。

解決しようとする技術的課題に関連性を持たない特徴は進歩性に貢献しない

 
あるカメラ関連発明において、発明で解決しようとする技術的課題はより機敏なシャッター制御をどのように実現するかであり、前記技術的課題はカメラ内部の関連機械及び回路構造の改良により実現している。審査官が請求項の進歩性欠如を指摘した後、出願人は請求項においてカメラ筐体の形状、ディスプレイのサイズ、電池収容部の位置などを含む特徴を追加した。明細書において、請求項に追加されたこれらの特徴と前記技術的課題との関連性が説明されておらず、…出願人もこれらの技術的特徴が保護を要求する技術方案に更なる技術的効果をもたらすことを証明する証拠又は十分な理由を提供していない。よって、上記技術的特徴は前記技術的課題の解決に貢献せず、保護を要求する技術方案に進歩性をもたらさない。(第二部分第四章6.4 保護を要求する発明に対する審査)
 
 最後に、今回の改正において、審査指南の記載内容が拡張されたほか、説明用の事例もさらに追加された。明細書の作成又は応答手続き時に行う補正において限定された技術的特徴が、当該発明が実際に解決しようとする技術的課題に実質的に有利な作用を生じない場合、当該技術的特徴は進歩性判断に如何なる影響も与えない。
 この事例において、出願人が追加した「カメラの外部構成」と「カメラの内部構造」により解決した技術的課題との間に実質的な関連性がないことは明白であるため、追加された特徴は発明に進歩性をもたらすものとはならない。
弊所コメント
 今回の「専利審査指南」第二部分第四章第6.4節の改正では、主に進歩性判断における実務上の操作についてより明確な規定が示された。カギとなるのは、「進歩性判断は請求項自体に焦点を当てなければならない」ことと、「技術的貢献は請求項に具体的に記載しなければならない」ことである。
 
 まず、今回の改正により、進歩性判断は請求項の技術方案全体に対して行わなければならないことが再び強調された。この原則は従来にもあったが、今回の改正を経てより明文化され、請求項の作成にあたり、出願人は技術内容の全体性、及び技術的特徴間の関連性を重要視すべきであるという助言がなされた。
 
 さらに、今回の改正において、実質的な影響が最も大きいのは、「技術的貢献をもたらす特徴は請求項に記載しなければならない」ことである。当該特徴が請求項で限定されていない、又はある特徴が発明の解決しようとする技術的課題に実質的に貢献しない場合、いずれも進歩性判断における考慮要素として見なされない。
 この規定により、進歩性に関する主張の強度を維持するためには、請求項で進歩性となるポイントをより具体的に示すほか、技術的特徴と技術的課題及び効果との間に十分な関連性が確保されている必要があることが強調された。
 
 以上をまとめると、上記の改正から、今後の中国専利審査実務において、進歩性に対する技術的特徴の影響の認定がより厳しいものとなることが予想される。そのため、請求項の記載内容について、出願人はより慎重に検討する必要がある。
 
キーワード:特許 新規性、進歩性 中囯

 

 

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