台湾最高行政裁判所、パテントリンケージ登録システムへの新用量の医薬品に係る特許情報登録を否認

Vol.137(2023年12月11日)

台湾最高行政裁判所は2023年11月23日、11月30日及び12月7日に、新用量の医薬品は台湾薬事法第7条でいう新薬に該当しないため、特許情報の提出やパテントリンケージ登録システムへの登録を行ってはならないとする判決1を下した。

台湾薬事法第4章の1で規定されている「医薬品のパテントリンケージ」は2019年に施行され、医薬品メーカーはパテントリンケージ登録システムから医薬品特許の情報を衛生福利部(日本の厚生労働省に相当、台湾FDAの上級官庁)に提出することができ、提出された情報は前記システムにより自動的に読み込まれ、登録・公開される。しかし、衛生福利部が手作業で情報の確認を行った所、一部の製薬会社から特許情報の登録があった医薬品が、従来の医薬品の用量を変更したものに過ぎず、新薬として特許情報を提出してはならないものであることが判明したため、衛生福利部は該当する登録の取消しを決定した。このうち、米Merck Sharp & Dohme Corp.台湾支社(MSD)、台湾愛力根薬品社、台湾諾華社、米CIMA LABS INC.の4社は、当該決定を不服として訴願を提起するも行政院に棄却され、これを受け台北高等行政裁判所に行政訴訟を提起した。

台北高等行政裁判所は米Merck Sharp & Dohme Corp.台湾支社(MSD)及び台湾愛力根薬品社に対し、敗訴判決を下した。その後、両社は最高行政裁判所に控訴したが、同裁判所は 2023年11月23日に両社の控訴を棄却する判決を下した。また同裁判所は判決において、成分が従来と変わらず、用量を変更しただけの医薬品は台湾薬事法で規定されている新薬には当たらないほか、「新薬」の定義を拡大や医薬品パテントリンケージ制度の適用範囲を変更する法改正を行うべきか否かは三権分立の憲法原則に基づき立法院が決定すべき事項であり、行政院が決定できる事項ではない、との見解を示した。

一方、台北高等行政裁判所は台湾諾華社及び米CIMA LABS INC.に勝訴判決2を下した。台北高等行政裁判所で行われた第一審において、同裁判所は「台湾薬事法第48条の3第2項の文言より、立法者は新薬に係る『物質』、『組成物又は配合』及び『医薬用途』の発明に限り、その特許情報を登録することができると考えており、またパテントリンケージ制度が適用される医薬品については、同法第7条で規定されている『新しい成分、新しい効能・複方、新しい投与経路製剤を有する医薬品』に限定されないと考えていることが分かる」との見解を述べたほか、台湾薬事法第4章の1に記載されている「新薬」とは、新たに(一定期間内に)医薬品許可証(Marketing Authorization、MA)を取得した先発医薬品を指すと認定し、衛生福利部に敗訴判決を下した。しかし、最高行政裁判所は11月30日及び12月7日に衛生福利部へ勝訴判決を下した。判決理由は前記2件と同様である。

以上より、これら4件の最高行政裁判所による判決から、新用量の医薬品は台湾薬事法第7条でいう新薬に該当しないため、特許情報の提出やパテントリンケージ登録システムへの登録を行ってはならないとする基準が確立された。

[1]最高行政裁判所111(2022)年度上字第531号判決、最高行政裁判所111(2022)年度上字第532号判決、最高行政裁判所112(2023)年度上字第110号判決、最高行政裁判所112(2023)年度上字第165号判決。

[2]台北高等行政裁判所110(2021)年度訴字第844号判決、台北高等行政裁判所110(2021)年度訴字第1060号判決。

キーワード:台湾 特許 判決紹介 医薬

 

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