台湾 著作権法改正草案が行政院院会で可決、立法院での審議へ

2021年4月9日

台湾行政院は4月8日、著作権法及び著作権集団管理団体条例の改正草案を行政院院会(閣議)で可決した。今回の改正は過去20年において改正内容が最も多い大改正と言われている。主な内容を以下に示す。

「公の放送」及び「公の送信」の定義を調整

現行法ではテレビ番組やラジオの伝達に関し、有線、無線又はその他の放送信号伝達用装置を用いる場合は「公の放送」、有線または無線のネットワーク若しくはその他の通信方法を用いる場合は「公の送信」と定義されていたため、同一の内容を異なる技術(放送とネットワーク)で提供、伝達した際に生じる権利が異なるものとなっていたため、権利調整やライセンス等で問題が生じている。そこで改正草案では、こうしたテレビ番組やラジオの伝達について、放送及びネットワークを問わず、いずれも「公の放送」へと統合することとしている。

「再公開伝達権」を創設

現行法では、スーパーやショッピングモール等の公の場所でPCや携帯電話を用いてYoutubeの動画を顧客等に見せる行為は著作権法で対処することができない。そこで改正草案ではこうした行為を「再公開伝達」と定義し、著作権の保護対象となっている。

著作権の制限内容を修正(フェアユース)

オンライン授業やリモート授業の需要に対応するため、授業目的の必要範囲内における著作物の利用態様を拡張させた。現行法は「他人の既に公表された著作物を複製することができる」と規定されているに過ぎないが、改正草案では複製に加え、翻案、頒布、公の上演、公の上映、そして条件付きで公の放送、公の送信、再公開伝達が追加されている。

また電子書籍の普及に伴い、図書館、博物館、歴史館、科学館、美術館またはその他の文教施設において一定条件の下、館内で電子的閲覧を認めることとしている。

そして非営利目的の利用に関し、現行法では非定期的な活動に限ると解釈されているが、改正草案では定期的な活動における利用についても著作権者に適切な使用料を支払う等の一定条件の下、フェアユースの対象となっている。なお定期的な活動における利用であっても、個人が私的機器(携帯やラジオなど)を用いて定期的に公園や街などで音楽を流してダンスをするといった個人の健康目的に基づく著作物の利用行為については、使用料を支払う必要はないと特別に規定されている。

著作権者不明による強制許諾規定を増設

著作権者が不明又はその所在が不明の場合、現行著作権法には規定がなく、文化創意産業発展法の規定に基づき、台湾特許庁へ利用許諾を申請しなればならない。今回の著作権法改正草案では、著作権者不明による強制許諾規定が増設されている。また日本著作権法第67条の2を参考とし、著作権者不明による強制許諾の申請後、担保金を供託した場合は著作物を利用できるという内容も規定されている。

著作権侵害物の広告やインターネットへの掲載をみなし侵害と規定

現行法では広告やインターネットへの著作権侵害物の販売情報を掲載する行為は、実際に侵害物を所有していない状態であったため、侵害行為とはされていなかった。そこで改正草案ではこうした行為についてみなし侵害と規定することとされている。

許諾料相当額に基づく損害賠償の請求を規定

改正草案では新たに許諾料相当額に基づく損害賠償の請求が認められている。

一部行為の刑事責任規定を緩和

販売または貸与の意図による複製の方法を用いた著作権侵害行為、販売または貸与の意図による光ディスクに複製する方法を用いた著作権侵害行為等の刑事責任について、現行法では6ヶ月以上5年以下の懲役(又は罰金と併科)とされている。これは例えば販売または貸与の意図による1つの光ディスクへの他人の著作物の複製という軽微な行為であっても、最低6ヶ月の懲役が科されることとなり、批判の声が出ていた。改正草案ではこの6ヶ月という懲役の下限が削除されている。

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