台湾 立体商標の出願注意事項

立体商標とは、三次元空間で長さ、幅、高さによって形成される立体的形状を有し、関連する消費者に異なる商品又は役務の出所を区別させられる標識を指す。立体商標として出願可能な態様には以下のようなものが含まれる:

  1. 商品自体の形状。
  2. 商品の包装容器の形状。
  3. 立体的形状の標識(商品又は商品包装容器以外の立体的形状)。
  4. 役務場所のインテリア設計。

※商標図案

立体商標の商標図案は立体的形状を表現する図面であり、立体的形状は六面体よりなるものである。簡単な立体的形状の場合、一つの角度からの図面によって立体的形状の全ての特徴を表示することが可能である。このとき、商標図案はその単一の図面となる。もし各角度によって外観の特徴が異なるときは、商標図案がその立体商標を完全に表示できるようにするため、商標図案は異なる角度の複数枚の図面となる可能性があるが、多くとも6枚までとする。登録出願後に、商標審査官が必要と判断したときは、出願人にその他の角度からの図面を補正するよう通知することができる。出願人も自発的に補正することができるが、補正後の商標図案の図面は6枚を超えてはならず、且つ本来の立体的形状の保護範囲を拡大することはできない。もし、補正したその他の角度からの図面が本来の商標図案にない商標の特徴を表示するものであれば、元々提出した商標図案とは同一の商標ではないので、商標図案は出願後に実質的な変更を行うことができないという規定に違反することになる(商23)。

立体商標の内容をより明瞭、明確に表示できるようにするため、立体的形状が商品又は役務において使用される方式、位置及び内容の態様等も商標図案の中に破線によって表現することができる(商施15Ⅱ)。例えば車両用水タンクカバーの立体商標の場合、商標図案は破線によって車体の外観を描き、その立体商標が商品において使用される位置を表現することができる。そのほか、商標において機能性を具えている部分は、商標権を取得することができないので、商標図案において破線という方式で表示することもできる。それら破線の部分は商標の一部に属さないので、混同誤認のおそれを考慮に入れる必要はなく、その部分に対する権利不要求を声明する必要もない。

商標図案中に含まれる識別性を具えない又は機能性の部分が破線ではなく、実線で表示されており、商標全体が識別性を具えているとき、これら識別性を具えない又は機能性の部分は商標権の範囲に疑義が生じるおそれのある状況と認められるべきであるので、権利不要求を声明するか又は破線で表示する必要がある。例えば業者が通常使用している円筒形のジャム用瓶を実線で表示してジャム製品を指定商品とし、商標全体が識別性を具えているとき、識別性をえていないその立体的形状も商標権の範囲に疑義が生じるおそれのある状況と認められるので、権利不要求を声明するか又は破線で改めて表示すべきである。

※商標記述

出願人は商標記述を提供し、立体的形状を説明しなければならない(商施15Ⅲ)。破線を用いて商標が商品又は役務において使用される方式、位置又は内容等を表示するときにも、説明を加えなければならない(商施13Ⅱ)。

【事例1】

商標記述:「本件は立体商標であり、商標図案で示すように、その外側全体は八角形を採用し、その八角形の外側は角を取り除き、わずかな丸みを表現している。中央部は筒状の空洞になっており、且つ内側は丸みを表現している。上部先端は扁平になっており、且つ八角形の8個の角に六角形のネジが8個配置されており、六角形のネジにはすべて、真ん中に一本の溝がある。」

【事例2】

商標記述:「本件は立体商標であり、商標図案で示すように、これは自動車のフロントキドニーグリル型水タンクのカバーである。破線部分は車両の形状を表示するものであり、商標の一部に属さない。」登録出願しようとする立体商標に文字、図形、記号等の構成部分が含まれている場合、併せて説明しなければならない(商施15Ⅲ)。

【事例3】

商標記述:「本件は立体商標であり、商標図案で示すように、これは上方に波形状の曲線設計とデザイン化された『D』という文字とを組み合わせたものである。」立体商標図案中に含まれている識別性を具えない又は機能性の部分が実線で表示された場合、商標権の範囲に疑義が生じるおそれがあると認められるべきであるので、権利不要求を声明していないものは登録を受けることができない(商29Ⅲ、30Ⅳ)。従って、立体商標を出願するときは、権利不要求を声明する部分は文字で明確に記述しなければならない。例えば、商標記述では「本件は立体商標であり、商標図案で示すように、これは雄鶏の立体的形状を自動車ルーフに使用した構成からなり、その中の自動車の形状の部分は商標権を主張しない」と記載するとともに、「本件商標は自動車の形状部分につき商標権を主張しない」と声明する。前述の権利不要求を声明すべき立体的形状が破線で表示されていれば、権利不要求を声明する必要はない。出願人が破線で表示した商標図案を補正するのは商標図案の実質的変更にあたらないので、その出願日には影響しない(商施24Ⅰ④)。

商標記述と各図面によって構成される商標図案は一致しなければならず、且つ相互に参照できるものでなければならない。商標記述が商標図案によって表示されている立体的形状と一致しないときは、商標図案を基準とし、出願人に通知し、期限を定めて補正させなければならない。

※識別性

立体商標として登録を受けるには、他の形態の商標と同じく、その立体商標が商品又は役務の出所を示し、消費者にそれと他人の商品又は役務を区別させるに足るものでなければならない。

従来の平面商標と比べると、立体的形状が識別性を具えることは比較的容易ではなく、特に立体的形状が商品自体の形状又は商品の包装容器の形状であるときは、それは商品と不可分又は密接な関連があるので、消費者の認識では、通常それを商品の機能を提供する形状又は装飾性を具えた設計とみなし、その形状を商品の出所を伝える情報とは思わない。従って、立体的形状の識別性を証明することは平面商標に比べ難しい。

消費者の認識以外に、商品の特性も考量しなければならない。もし商品の特性によって、その多様化した設計がもともと常態化したものであれば、例えば人形商品、照明器具、衣服商品等の場合、消費者は通常、それを装飾的な造型とみなし、出所を区別するための標識とみなさない。商品の特性は消費者がその種類の商品を選択する時、商標に対する注意度にも影響し、一般的には高価格、専門的又は耐久財の商品であればあるほど、例えばハイテクノロジー製品、医薬品等に対しては注意度が高くなるため、これらの製品の立体的形状に対する注意度も相対的に高まり、商標が出所を区別する際の標識となる可能性も比較的高くなる。これに反して、消費者は低価格、日用品又は非耐久財の商品、例えば石鹸等の商品に対する注意度は比較的低くなり、これらの商品の立体的形状が極めて独特なもので注目を集め、消費者の記憶に残りやすく、その認識によりそれを商品又は役務の出所を区別する標識と認識させるものでない限り、識別性を有しないものとする。

このほか、業界での使用状況も重要な考慮要素である。もしその立体的形状が関連する業者によって通常採用されるものであれば、その立体的形状は出所区別機能を有しないものとして識別性を具えていないと認められるべきである。

  1. 商品自体の形状:

    一般的に言えば、商品自体の形状の多くは商品の機能性を果すためにデザインされたものであり、又特殊な商品の形状は商品への吸引力を発揮させるための装飾的デザインにすぎないということもしばしばある。そのため、消費者は通常、それを商品の出所識別標識とはみなさないので、先天的識別性を有しないものとなっている。従って、その商標が使用によって後天的識別性を取得したものであることを証明しないと、登録を受けることはできない。

    但し、商品の形状は極めて特殊であり、業界で通常用いられている形状とは明らかに異なり、且つ消費者の予想を超えた強烈な印象を与え、その顕著な相違性は消費者に機能的又は装飾的なデザインでないと認識させ、その形状のみによって商品又は役務の出所を識別させるに足るものであれば、その形状は商品出所識別機能を具え、先天的識別性を有するものとして認めることができる。幾つかの商品区分において、多様化した商品の形状設計が本来常態化したものである場合、例えば商品区分第28類の玩具商品、第14類の宝飾品及び第11類の照明器具等、消費者は一般的にその商品の形状設計を商品自体の形状が変形したもの又は装飾とみなし、商品の出所を識別する標識とみなさないので、その商品の形状設計が業界で通常用いられている形状と異なっていても、それを先天的識別性を有すると認めることはやはり容易ではない。

  2. 商品の包装容器の形状:

    商品自体の形状に比べ、商品の包装容器の形状は先天的識別性を有する可能性が比較的高い。但し、その包装容器の形状はやはり通常よく見かける形状とは明らかに異なるものでなければならず、消費者に強い印象を与え、それを出所識別の標識と認識させた上ではじめて識別性を有するものとする。商標は関連する消費市場で通常用いられる商品の包装容器の形状のみで構成されるものであれば、商品の出所を識別する標識とすることができないので、識別性を有さないとすべきである。

  3. 立体的形状の標識(商品又は商品の包装容器以外の立体的形状):

    商品又は商品の包装容器以外の立体的形状の標識とは、商品又は商品の包装容器と関連しない立体的形状のデザインのことを指す。これらの立体的形状は商品又は役務の提供と密接な関連を有するもの、例えばベンツのフロントに付けられた「」標識又はマクドナルドの入り口に置いてあるマスコットのドナルド・マクドナルド、ディンタイフォンの店先に置いてある小籠包型のマスコットキャラクターの場合は、その識別性の判断基準は原則として平面商標と同じく、消費者に商品又は役務の出所を識別させるに足るものであれば、識別性を有するものとする。立体的形状は商品又は役務の提供と密接な関連性を有しないもの、例えば商品又は役務の販売促進だけに用いられる立体の人形又はフィギュアはそのデザインが多種多様で、新商品を次々と発表することはよくあるので、指定商品又は役務の属性によって、消費者は通常、それを出所の識別標識としないので、後天的識別性の獲得を証明した後はじめて登録を受けることができる。

  4. 役務場所のインテリア設計:

    役務場所のインテリア設計とは、営業場所の全体的な外観装飾であり、その識別性の判断基準は商品の包装容器の形状と同じである。新奇性のない平凡なインテリア設計を以って登録出願する場合、識別性を有さず登録を受けることはできない(商 29Ⅰ③)。

※機能性

立体的形状は商品又は役務の用途又は使用目的からいえば必要不可欠であり、又は商品又は役務のコスト、品質に影響を与えるものであれば、機能性を有するものとする。立体的形状が機能性を有し、同種類の商品又は役務の競争において優位性を持っていれば、一般業者に自由に使用させることができ、公平な競争を促進させるために、創始者が特許法に基づく一定期間の保護を取得できることを除き、特定の人に商標登録をさせ長期にわたり独占使用させることはできない。従って、機能性を有する立体的形状はたとえ特許権存続期間の独占使用によって商品出所識別機能が生じても、やはり登録を受けることはできない(商30Ⅰ①)。

機能性の具体的な考量要素は以下の通りである:

  1. その形状がその商品の使用又は目的を果たすために必要なものか否か:

    「その形状がその商品の使用又は目的を果たすために必要なものである」

    とは、他の競争者の選択に供するその形状を代替する他の形状がなく、その商品の使用目的を果すために必要であることを指す。例えば円形はタイヤの設計において唯一の選択であるので、円形の外観はタイヤの商標として登録し、特定の人に独占的に使用させることができない;又、縫い針は一方の端を鋭く尖らせ、もう一方の端を糸を通す楕円形にしてあるものでなければ、衣服を縫うという使用目的を果たすことができない。その形状を登録出願する場合、その形状は衣服の縫製又は補修という目的を達成するために必要なものであるから、特定の人に独占的に使用させたならば、公平な競争に重大な影響を与えることになるので、その機能を発揮させるために必要なものとして登録を許可しない。

  2. その形状がある技術効果をあげるために必要なものか否か:

    立体的形状がある技術効果をあげるために必要なものであるとは、その形状の主な機能特徴が特定の技術効果をあげるためだけに用いられることを指す。例えば扇風機の羽根の形状は、特定の空気の流れを起こす効果をあげるために必要な形状であるので、扇風機の羽根の形状を以って扇風機商品を指定商品として登録出願することはできない。そのほか、特定の技術効果をあげることができる立体的形状による商標権の取得は、競争同業者がその形状を技術解決法として選択する自由を制限し、公平な競争を妨害するものである場合、たとえ同じ技術効果をあげることができるその他の代替的な形状があるにしても、その形状が機能性を有するという拒絶事由にも対抗することができない。ある立体的形状がある技術効果をあげるために必要なものか否かであるかについては、その形状が既に特許権又は実用新案権を取得しているか否かを判断基準の一つとすることができる。因みに特許権又は実用新案権が存在することはその形状の実用的機能を明らかに示すことができるので、その形状がある技術効果をあげるために必要な表面的な証拠を具えているとすることができる。たとえ特許権又は実用新案権の存続期間が過ぎていても、その形状が機能性を有しているとの認定を妨害することにならない。もし出願人がその広告又は販促キャンペーンにおいてその立体的形状が特定の機能を有し、又はある技術効果をあげることができると明確に強調し、又その説明が単に広告効果をあげるために過大に述べていたものでなければ、この事実をその立体的形状がある技術効果をあげるために必要なものであるか否かを判断する証拠とすることができる。このほか、競争同業者又は業界の刊行物における、その特定の形状又は技術の特徴と同一又は類似する広告及び報道等も機能性を判断する際の参考とすることができる。

  3. その形状の製作コスト又は方法が比較的簡単、安価又は良好か否か:

    その形状の製作コスト又は方法が比較的簡単、安価又は比較的良好である場合、一旦その形状を立体商標として登録し、商標権を取得することを許可すれば、他の業者はその商標を侵害しないようにするため、製造コストを増加したり、より難しい又はより悪い製造方法でその他の形状を製造したりしなければならず、社会の経済資源の浪費を招くことになる。このように、不公平な競争をもたらすことは明らかであり、公益にも重大な影響を及ぼすことになるので、その形状は機能性を有するものとして登録することができない。例えばクッキー製造の過程における簡単な押し出したり、切ったりする用の円形又は長方形の形状が挙げられる。

购物车

登入

登入成功