台湾 「混同誤認の虞審査基準」の改正を発表、即日施行

Vol.101(2021年12月01日)

台湾知的財産局は、2021年10月27日に「混同誤認の虞審査基準」の改正を発布し、改正後の内容は同日から施行された(https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-897802-5fb92-1.html)。

台湾商標法では日本の商標法4条1項11号に相当する先行登録商標の存在による拒絶理由において、商標及び指定商品役務の同一類似性に加え、混同誤認の虞を生じることが要件として規定されている。また商標権侵害の規定でも、商標と指定商品役務がいずれも同一の場合を除いて、混同誤認の虞を生じることが要件とされている。つまり、混同誤認の虞は登録要件や商標権侵害の際における重要な判断事項である。

今回の改正では、商標及び商品役務の類否の判断基準、並びにその他の混同誤認の虞の参酌要素についてより詳細な説明が加えられるとともに、近年の事例が多数追加されており、注目すべき改正となっている。本文では、「混同誤認の虞審査基準」において今回追加・改正された重要な内容を以下に紹介する。

商標の類否及びその類似の程度

類否判断においてデザインコンセプトは考慮しない

商標の創造性やデザインコンセプトについては、デザイナーの内心の主観的意志に関するものであり、消費者が商標の外観形式から知ることができるものではない。よって類否を判断する際は、客観的に呈された商標に基づくこととし、主観的な要素は考慮しない。

中国語・外国語文字商標の類否を判断する際の原則

文字の称呼の判断基準に関し、商標自体の称呼を基準とする。外国語文字商標と中国語・外国語文字の両方を有する商標との類否を判断する場合、原則として外国語部分のみを比較する。しかし、中国語・外国語が対応する称呼である場合、又は社会通念上関連消費者に連想する言葉を生じさせやすい言葉である場合は、全体の称呼はやはり類似の可能性を有する(例:「Fuji」と「富士」)。

外国語文字商標の判断基準に関し、外国語の初めの部分が同一であったとしても、当該部分の指定商品/役務における識別力が低い、又は当該部分に他の語が結合されて明らかに異なる意味を有する場合、類似の程度は低くなる。

例:「Bioneed」と「BIONEO」

「bio」は外国語文字における一般的な接頭辞であり、類似商品/役務において広く商標の一部として使用されているため、両者は類似の程度が低いと認定する。

外国語文字が全体として単独の意味を有する場合、例えば「Primrose(プリムローズ、ライラック)」と「Rose(薔薇)」)について、原則として文字を分解又は分断して比較し両者が類似であると判断してはならない。外国語文字商標が関連消費者に熟知されている複数の語句から成り、関連消費者が当該語句のうち識別力を有する語により混同が生じる場合、類似と認定することができる。例えば「LINECAST」と「LINE」は類似する。

外国語文字に符号、記号等が用いられている場合、又は通常の書き方とは異なる大文字小文字の組み合わせであって、外国語文字が外観上分離できる場合、原則としてこれらを単語として分離してから全体として観察し、商標の要部に注目して比較、観察することができる。消費者の注目する又は後に印象に残る要部が類似しているほど、類似の程度はより高いと判断する。例えば「coco, Bonnie」と「COCO」、「ariCASE」と「ARI」。

その他の判断基準

商標の一部が他人の商標全体である場合又は他人の商標の要部を含む場合、類似の程度が高いと判断することができる。

例えば「LINE CAST 」と「LINE 」、 「」と「Playboy logo」。 二つの商標が同一部分を有しており、それに識別力を有さない文字が組み合わされている又は全体の外観及び観念における影響が僅かな場合、類似の程度が高いと判断する。例えば「WISS」と「IWISS」、「好韓村」と「韓村館」。 構造における類似も商標類似の態様の一つである。しかし類似の概念を過度に拡張しないよう、構造の類似は創意性が高い独創的商標又は暗示的商標に限り適用し、かつ商品/役務の類似程度の要件も比較的高いものとする。例えば、「十乗十」と「10x10」が先行商標として登録されている場合、「TEN BY TEN」はこれら先行商標と中国語、外国語又は記号が異なるが、構造上はいずれも10×10の数式であるため、類似と判断する。

商品役務の類否及びその類似の程度

商品の性質、機能又は用途等の要素を判断する際の原則

商品の性質とは商品の本質又は特性を指す。例えばケーキは菓子の一種であり、車は乗り物の一種である。しかし、比較する二つの商品がいずれも広義の商品で概括できるとしても、当該2つの商品が当然に同一の性質を有すると判断するわけではないことに注意しなければならない。例えば、「果物」と「コーヒー」、両者はいずれも食用の商品に属するが、性質は異なると判断する。

商品が製品、部品、原料、又は半成品であるかを判断する際の原則

商品が複数の部品からなる又は一つの商品を原料又は半製品として別の商品等を製造するために用いるという事実があったとしても、これら商品が当然に類似関係を有すると認定するわけではなく、具体的な状況に応じて判断しなければならない。

部品又は半製品の商品が独立して販売され、かつ最終製品の使用に必要なものである場合、両者は補完的な関係を有し、類似商品と判断される可能性が高くなる。例えば、第21類の「電動歯ブラシ」と「電動歯ブラシヘッド」、車とリム。

食品製品に必要な材料について、たとえ材料と製品が同じ種類の食品に属するものであっても、両者が当然に類似関係を有すると判断されるわけではない。例えば、第30類の「酵母」と「パン」。しかし食品製品の主な成分について、特に製品の出所、性質、用途又は使用方法が同一である場合、類似であると判断される可能性が高くなる。例えば、第29類の「牛乳」と「ヨーグルト」。ただし、材料と製品の変形の程度が大きく、性質、用途、生産者、販売チャネルや販売場所等の要素が異なる場合は、類似関係を有さないと判断する。例えば、「卵」と「ケーキ」。

販売場所

現在ではスーパー、ドラッグストアや百貨店等で様々な商品が販売されているため、この要素を過度に強調する必要はない。一般消費者はこれら場所で販売される商品の出所が多くの業者であることを知っているため、専売形態の売場で、従来通り同じエリアで同じ種類の商品を販売する場合(例えばスーパーの乳製品売場や百貨店の化粧品エリアなど)は、類似と判断される可能性が高まる。類否判断の際は、商品販売の配置エリアと商品の機能などを総合的に考慮しなければならない。例えば、「家庭用ミキサー」と「コーヒーメーカー」は、どちらも同じ家電部門で販売されていることが多いため、類似商品と判断される可能性が高まる。ただし、21類の「食卓皿」「コップ」「お碗」と24類の「ベッドシーツ」「布団カバー」は、どちらも百貨店の同じフロアで販売されていることが多いが、商品の機能、用途が大きく異なるため、類似でないと判断される。

商品及びその設置、メンテナンス・補修、修理の役務

商品及びその設置、メンテナンス・補修及び修理の役務は、以下の参考要素を考慮して類似を判断しなければならない。①関連市場分野で、商品の製造業者が一般的に当該役務を提供している、②消費者群が同一である、③設置、メンテナンス・補修、修理といった当該役務の提供が商品の購入から独立している他、商品のアフターサービスでもない。

関連消費者の各商標に対する熟知度

台湾商標法は登録保護の原則(登録主義)を採用しているため、関連消費者の各商標に対する熟知度という要素は、商標及び商品役務の類否判断において決定性を有するものではなく、他の参考要素と合わせて総合的に判断しなければならない。

関連消費者が二つの商標をいずれも相当熟知している、つまり関連消費者は両商標の市場における併存事実を認識しており、かつ後願商標の使用によって関連消費者は両商標の出所が異なると区別できることを後願商標の出願人が証明した場合、この併存事実はできる限り尊重しなければならない。

その他の要素

二つの商標に混同誤認が生じるか否かの審査は、正当な理由がない限り、平等原則を満たすよう差別待遇を行ってはならない。しかし、いわゆる行政の自己拘束原則は、絶対的・機械的な形式上の平等を意味するものではなく、同一事物の性質は同一に処理されるべきであることを意味することに注意しなければならない。例えば、両商標が高度に類似している前提では平等原則が適用される可能性はあるが、両商標が高度に類似しているとしても、個別案件において異なる参考要素が存在する場合、一概に平等原則が適用されるとは限らない。

商標出願の審査は、個別審査原則を採用しており、個別具体的な出願の審査が合法、適切か否かについて、商標専門機関は異なる特定の出願を見て、事実と法律の適用を正確に判断しなければならず、他の事件の拘束を受けない。個別審査原則は必然的に平等原則に反するというわけではない。例えば、ある複数の事案の事実が実質的に同一であって、それらを一体に援用して同一の処理を行わなかった場合は、平等原則に反する。例えば、商標の出願と争議では案件の性質が異なるため、参酌する事実、証拠資料又は当事者の紛争事項、意見書等も全く異なり、異なる処理を行ったとしても、実質的な平等を満たすことから、平等原則に反するという問題はない。

先行商標権者の同意取得(コンセント)における明らかに不当な類型

先行商標の権利者から併存登録の同意を取得することも混同誤認の衝突を排除する方法の一つである。しかし、明らかに不当な状況である場合は、たとえ先行商標の権利者が併存同意書を提出したとしても、登録を受けることはできない。明らかに不当な状況の類型に関する説明を以下に示す。

  1. 出願商標が先行商標と同一で、かつ指定商品役務も同一である場合。商標に関し、記号の有無又は大文字と小文字等わずかな違いのみ場合、消費者はそれらを無視する可能性が高いため、これらは同一の商標と見なす。例えば、「旺旺」と「旺-旺」、「BABY CARE」と「baby care」。商品/役務に関し、記載は異なるが、実質的に同一概念の商品/役務に属する場合、これらは同一の商品役務と見なす。例えば、「中国語:藥錠(錠剤)」と「中国語:藥丸(錠剤)」、「中国語:唇膏(口紅)」と「中国語:口紅」)。
  2. 商品役務が上述のように実質的同一ではないが、包含関係にある場合。例えば、「化粧品」と「口紅」は包含関係にあるため、併存登録を行う場合は化粧品を口紅へと減縮しなければならない。役務の場合も同様である。
  3. 登録商標が裁判所から禁止処分を受けた場合。
  4. 商標専門機関がその他明らかな不当な状況であると認定した場合。

 

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