台湾商標法改正草案第2版を公布(2021年7月)

Vol.94 (2021年8月5日)

台湾特許庁は2021年1月7日に台湾商標法の改正草案(合計53条を改正)を公表し、商標出願、異議申立て及び無効審判審決に対する行政救済制度に重要な変更が加えられた。その後、各界や公聴会からの意見を受けて、台湾特許庁は、2021年7月1日に台湾商標法の第2次改正草案を公表し1 、第1次改正草案を詳細に改訂した。以下に、第1次改正草案と第2次改正草案の主な改正内容の概要を紹介する。

改正草案第2版の概要

複審・争議審議委員会の審判官の除斥について

第1版では、複審及び無効審判・取消審判の審議を行う複審・争議審議委員会の審議官は、台湾特許庁から3人又は5人の合議体が指定されると規定されているに過ぎなかった。

第2版ではさらに、複審の審議を行う審議官が、事件について出願段階で査定を下した審査官である場合は、その審判官は除斥される規定が追加されている。(修正後56条の2)

LEGO社は同年被告に対して警告書を送付したが、被告が侵害行為を続けたため、同社は民事訴訟を提起した。その後、知的財産裁判所は「被告の行為はLEGO社の商標権を侵害するものであり、また公平取引法の規定にも違反する」という判決を下した2

複審及び無効審判・取消審判の申請手続きに期限付き補正規定を追加

第1版では、複審及び無効審判・取消審判の申請手続きに対し、受理されない状況がいくつか挙げられていたのみであり、不備を解消する補正ができるのか、補正により不備が解消された場合は受理されるのかという点が不明であった。

第2版では、補正可能な不備の場合、台湾特許庁はまず期限内に補正するよう通知を行わなければならないことが規定されている。(修正後56条の7)

取消訴訟代理人規定の調整

複審及び無効審判・取消審判の行政訴訟(取消訴訟)の訴訟代理人に関し、第2版では「審判長の許可を得た者」も訴訟代理人となることができるという規定が追加されている。これにより、(公法人等ではない)通常の当事者の行政訴訟において訴訟代理人となることができる者は、弁護士及び「審判長の許可を得た者」となっている。(修正後67条の4)

複審及び無効審判・取消審判の参加人も取消訴訟提起が可能という規定を追加

第2版では複審及び無効審判・取消審判の参加人は、複審・争議審議委員会の決定に不服の場合、取消訴訟を提起することができると規定されている。(修正後67条の5及び67条の8)

無効審判・取消審判の取消訴訟における新証拠提出の例外規定追加

第1版では、当事者又は参加人は無効審判、取消審判の手続きにおいて証拠又は理由を提出していなかった場合、取消訴訟の段階になってからそれらを提出することはできないという規定が追加されていたが、その例外規定については特に規定されていなかった。

第2版において取消訴訟の段階で新たな証拠を提出できる例外規定として、(1)台湾特許庁が法令に違反した場合、(2)当該事実が既に裁判所において明らかになっている又は職務上すでに知られている場合、(3)裁判所が職権で調査すべき場合の3つが追加されている。(修正後67条の9)

経過措置(新法旧法の適用)について

第1版では、改正法施行前に査定又は処分が下された案件であって、訴願又は行政訴訟により台湾特許庁の審査へと差し戻された場合、当該案件は改正後の商標法が適用されると規定されていた。

しかし第2版では、改正法施行前に査定又は処分が下された案件であって、訴願又は行政訴訟により台湾特許庁への審査へと差し戻された場合、当該案件は改正前の商標法が適用されると変更されている。この変更は、差し戻し案件は当初の審査及び審理において、今回の改正草案規定の当事者間訴訟モデルを採用していないことを考慮したものであると思われる。(修正後109条の2)

弊所コメント

参加人も取消訴訟提起が可能という点について

今回の改正草案が通れば、参加人の地位は当事者の地位に近づき、権利や更なる救済を主張することが可能になり、実際の案件において重要な役割を果たすことができるようになる。また、このような商標法の救済整備は多国籍企業を引き付け、経済発展の促進に繋がると考える。

取消訴訟における新証拠提出の例外規定追加について

現行商標法では、新証拠提出に関する規定は特になかったため、当事者は無効審判・取消審判の審理中や訴訟の審理中に、新たな証拠を提出することにより、審理を遅らせることができた。そこで改正草案第1版では審理遅延の防止という観点に基づき、民事訴訟法第447条における「厳格な続審主義」という精神を参考とし、無効審判・取消審判の審議手続きにおいて提出されなかった理由及び証拠について、取消訴訟の段階で提出した場合、裁判所は原則としてそれらを却下するという規定が追加されていた。よって、当事者が証拠を提出する場合、無効審判、取消審判の手続きにおいて提出する必要があり、訴訟段階では新たな証拠を提出することは原則できないため、当事者からすれば訴訟段階の攻防策において大きな改正といえる。

また台湾では近年、紛争の早期解決を促進することは両当事者の義務であるという考えが定着してきていることに加え、台湾特許庁は新証拠提出の制限により訴訟経済を重視するという目的が達成されることを期待しており、改正草案第1案の改正は司法実務に則した改正であるといえる。そして第2版ではさらに新たな証拠を提出できる例外規定が限定列挙されていることにも注意が必要である。

改正案が可決された場合、当事者は証拠提出の時期に更に注意を払い、各証拠をできるだけ早く集める必要がある。また今日のペーパーレス化の時代では、必要時に備えて、電子データの保存及びその保存期間にも注意を払わなければならない。

まとめ

第2版では、第1版の内容に対する変更はほとんどなされておらず、主に手続き規定に対して詳細な規定を追加し、第1版の規定を微調整したものであることがわかる。しかし、第2版で追加された参加人による取消訴訟提起が可能となった点、及び訴訟段階での新証拠提出の例外規定については、いずれも過去の台湾商標法では採用されていなかった規定である。

今回の台湾商標法の改正は、国際基準に準拠するよう日本、米国、ドイツ等各国の商標救済制度を参考にしたものとされている。台湾特許庁の審議手続きを強化し、また商標の救済手続きを最適化することで、より便利で効率的、革新的な未来が台湾商標制度にもたらされることが期待される。

キーワード:商標 台湾 法改正

 

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